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「しつけのつもり」が子どもを傷つけている?知らずにやってしまう"見えない虐待"の真実

「何度言えばわかるの!」「うるさい!」——子育て中に思わず口から出てしまうこんな言葉。あなたは「しつけ」のつもりでも、実は子どもの心と脳に深刻なダメージを与えているかもしれません。

近年、小児精神科医や研究者たちが警鐘を鳴らしているのが、「マルトリートメント(不適切な養育)」という概念です。虐待とは無縁だと思っている多くの親が、日常的にこの行為をしてしまっている可能性があります。


マルトリートメントとは何か?

マルトリートメント(Child Maltreatment)とは、WHOが定義する概念で、身体的・精神的・性的虐待やネグレクトを含む、子どもの健全な成長・発達を阻むあらゆる不適切な養育行為を指します。

重要なのは、親に「傷つけよう」という意図がなくても、子どもが傷ついていればマルトリートメントに該当するという点です。ニュースで報道されるような極端な虐待だけでなく、日常のしつけの中に潜む言動も含まれます。

たとえば、以下のような行為が該当します。


大きな声で怒鳴りつける

「ダメ!」「はやくして!」と繰り返し叱責する

手加減しながらも体罰を与える

「あなたはダメな子だ」などの否定的な言葉を使う


これらは多くの家庭で「しつけ」として行われていますが、子どもの視点では深刻な心理的ダメージになり得るのです。


「しつけ」が子どもの脳を物理的に傷つける

福井大学の小児精神科医・友田明美氏の研究によると、マルトリートメントが頻度や強度を増すと、子どもの脳は部位によって萎縮したり肥大したりするなど、物理的に損傷することが明らかになっています。

具体的には、次のような影響が報告されています。


言語的暴力(怒鳴る・暴言):言語を処理する脳の部位に傷がつく

体罰:脳の神経回路に異常な反応が生じ、より深刻な虐待と同様の脳機能の変化が見られる

心理的ストレス:ホルモン分泌の乱れ、神経系・心血管系への過負荷が生じる


さらに、体罰を受けた子どもは脳の反応が増大し、脳機能が変化することも研究で示されています。「軽い体罰なら大丈夫」という考えは、科学的根拠のない誤解なのです。


脳へのダメージが引き起こす長期的な影響

マルトリートメントによる脳へのダメージは、一時的なものではありません。長期にわたって子どもの人生に影響を及ぼします。


学習意欲の低下・学力不振

攻撃性の増加・問題行動

不安障害・うつ病などのこころの病

対人関係の困難

自己肯定感の著しい低下


世界保健機関(WHO)も、体罰はいかなる形であれ子どもの身体的・精神的健康を害し、認知・社会・情動的発達を損なうと明言しています。しつけの目的が「子どもを正しく導くこと」であるならば、恐怖や痛みを与える方法はその目的に反しているといえます。


では、どうすればいいのか?「脳を傷つけない子育て」の実践

マルトリートメントを避けるために、今日からできる関わり方があります。


感情的になる前に一呼吸おく:怒りを感じたら、その場を少し離れて冷静になる

行動を否定し、人格は否定しない:「あなたはダメ」ではなく「その行動はよくない」と伝える

理由を説明する:なぜいけないのかを子どもの目線でわかりやすく話す

できたことをほめる:叱るより、良い行動を認めて強化する「ほめ育て」を意識する

子どものSOSサインを見逃さない:表情や行動の変化に敏感になる


親も完璧ではありません。感情的になってしまうこともあるでしょう。大切なのは、「しつけ」と「傷つけ」の境界線を意識し続けることです。


まとめ

「しつけのつもり」が子どもを傷つけているケースは、決して他人事ではありません。マルトリートメントは特別な虐待家庭だけの問題ではなく、善意ある親の日常の中にも潜んでいます。

子どもの脳と心は、今この瞬間も発達し続けています。一度傷ついた脳を元に戻すことは容易ではありませんが、関わり方を変えることはいつからでも遅くはありません。今日から少しずつ、子どもの気持ちに寄り添う子育てを意識してみてください。

 
 
 

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